漢方って奥深い!! コラム第一回 ≪陰と陽って?≫
当院では漢方医学をもとに、患者様の治療に取り組んでいます。
漢方医学の特徴として、「病気をみるのではなく病人をみる。病気を治すのではなく病人を治す」とあります。また心と体は一体のものであり、人体のあらゆる機能は心と体の相互作用によってなされると考えられています。(心身一如)。
病気を部分的にみるのではなく、一つの体として、自然界を大宇宙、人体を小宇宙として考え、自然界の出来事も人体の生理、病理、疾病の発生も同じ法則でできていると考えられています。
東洋医学は、自然哲学思想を基礎にした、実践的な治療医学と言えますね。
漢方医学では、生体機能や病態の認識、治療原則などを、「陰陽」「表裏」「虚実」「補瀉」といった相反する二つの概念によって相対的に捉えます。今回は漢方医学の、基本の基本、「陰陽」についてお話させていただきます。
漢方医学では、“陰”とか“陽”という言葉が度々出てきますが、一般的に陰は暗い、日陰のイメージ、“陽”は明るい、日なたのイメージが強いですね。陰陽は、二つの相反するエネルギーや現象の呼び名なのです。また陰と陽は、お互いに特別な関係にあります。
- 陰と陽は引き合う性質(陽は陰を好み、陰は陽を好む)
- 陰と陰、陽と陽は反発する(磁石のN極とS極との関係と同じ)
自然界はこの二つの相反する事象があり、これらがバランス良く調和しています。
人体においても同様の調和が保たれていますが、何らかの原因により調和がとれなくなった時病気になります。人それぞれの、陰陽のバランスというのは違うものなのですね。
人体の陰と陽はどこにあるか?
それは、四足の動物を想像して下さい。太陽があたる背中から後頭部、足の外側が陽、お腹と足の内側が陰に当たります。バランスを崩し、陽が強まってしまった患者さんには、冷やす作用の薬を、陰が強まった患者さんには体を温める作用の薬を使います。これが漢方薬ですね。
さらに漢方薬は、病気の時期(病期)によってもその使い分けを行います。(陽証と陰証)
陽証とは気血が十分にあり、体温が上昇して熱性傾向を帯び、体力の充実した人が罹患した時になりやすい証を言います。(熱性、活動性、発揚性)
これに対して陰証は気血が不足気味で、病邪に対する闘病反応が沈滞気味の時期を言います。(寒性、非活動性、沈降性)体温は低下、痩身で無力様、顔色不良、典型的なのは起きているのがつらいほどの倦怠感があり、脈の緊張は低下します。
陰証、陽証ともにさらに三つの時期(三陰三陽、六病位)に分けられ、おのおの病期別に漢方方剤が分類されています。長期にわたる経過の長い慢性疾患も、長い目でみれば病の初発があり、症状の激しい時期の後は、やや落ち着いた時期があり、治らない場合は症状をぶりかえすといった展開に、六病位により全体の陰陽虚実を診るということがあります。
【 漢方的な自然界の分類 】
陰に分類される物
天、日蔭、夜、女、寒、右、上、植物、冬
陽に分類される物
地、日向、昼、男、熱、左、下、動物、夏
漢方の疾病に対する概念
陰証病
寒性、気血の不足、慢性的、血色不良、体温の低下、他覚的に冷えてる、温熱器具を好む、尿の色は透明。
陽証病
熱性、気血が充実、急性的、血色良、体温の上昇、他覚的に冷えは無い、暖房を好まず、尿は濃い。
次回はこの虚実についてお話していきます。